宇治の閑静な住宅街にゴトンガタンとリズミカルに鳴り響く機械音。昇苑くみひもの工場では、毎日何十種類もの組み方をインプットされた機械たちが多種多様の紐を作り上げていく。創業50年と、千年の歴史を持つ京くみひもと比べればまだ歴史は浅いが、伝統の技はしっかりと伝承されている。だが、十数年前に梶さんが二代目となった現在は6人の伝統工芸士をかかえているものの、生産のほとんどを機械に任せているのが現状だ。

「どんなに素晴らしい商品でも作り手側の苦労がなかなか買い手に伝わらない」と梶さんは悔しがる。手組みだと生産も限られる上に多大な労力と時間が必要で、それに見合った価格をつけても大量生産・低価格という風潮が業界に影響を与えているため、どうしても買い手との間に溝を作ってしまうのだ。また、手組みの高級なイメージも大きなネックとなっている。

それでも梶さんは「機械にも機械にしか出せない組み方がある」と時代の流れを柔軟に捉え、手作りの温かみと質の高さを守りながら新しい京くみひもの魅力をどんどんと広げている。先代の「古き良きものの中にも新しさを」という意志をしっかりと受け継いだその前向きな姿勢が、携帯ストラップや髪飾り、コースター、名刺入れといった京くみひもの七変化を可能にさせたといえる。

携帯ストラップが伝える伝統工芸の魅力 -梶さんの挑戦-

梶さんが京くみひもの携帯ストラップを販売し始めたのは6年前のこと。「和装離れに業界の生産が落ち込む中、どうすれば現代の生活の中に組み紐が溶け込むことができるか」と日々商品開発に励んでいた。その中で花開いたのが携帯ストラップだ。エレガント&シンプルでクオリティの高いこの製品は、配色を何パターンも考えに考え抜いた自信作。萌黄色やワイン色、水色など十二単を偲ばせる平安朝の雅やかな色彩が魅力的だ。重要な仕上げの工程すべてが手組みのため手間がかかるが、手は一切抜いていない。女性誌で紹介されてことがきっかけで大ヒットになった現在は、自作のホームページ上のオンラインショッピングでも看板商品となっている。

「昔の作品を時代にマッチした商品にアレンジして、気軽に京くみひもを使って欲しい。実際に触ってもらって、伝統工芸の魅力を知って欲しいんです。なんといっても平安時代から千年以上も続いた日本の文化なんですからね」と梶さんは語ってくれた。 日常生活で伝統工芸に触れる機会が減った今日、梶さんのような新しい試みはとても新鮮で、私たちを伝統工芸という世界の入口まで導いてくれているようだ。京くみひもの携帯ストラップは1本600円。しっかりとした作りで手触りも良い。