現代の扇子

伝統工芸というと、現代日本人の生活の表舞台ではなかなかお目にかかれない物が多い中、扇子という道具は比較的実用的に使われているもののひとつであろう。一般的なものは、文具店やみやげ物店、催し物などの景品など、安価で手に入れやすく、夏の暑い日など、いつでもどこでも取り出して、パタパタと手軽に涼をとることができ、かばんにひとつ忍ばせて便利に使っておられる方も多い。 また、日本舞踊や、お茶席には欠かせない必需品として、特に京都では需要の高い品であり、その用途に応じた扇を生むためには、日本文化への深い造詣が必要とされるため、その生産も京都が約 9割を占める。

京扇子の歴史

日本の伝統産業の多くがその源を中国とするものが多い中、扇子においては、京都にて生まれたものである。この起源は諸説あるが、平安初期頃、当時高価であった紙の代わりに一般的な記録媒体として使われた木簡を、紐でつないだ檜扇に端を発し、のち、竹と紙による紙扇へと移り変わっていったというのが一般的な説である。 涼を取るための道具としては中国で生まれた団扇がすでにあり、扇子は貴族が儀式の際に持つ装飾品、歌を書き付けるもの、祭礼品などの用途でしか使われなかったと言う。現代においても日本舞踊、茶席、祭礼などで扇子が多く用いられるがいずれも涼を取る用途には使われない。涼をとる道具として用いられるようになったのは、のちのこととされている。

  • 夏の扇:涼をとるための扇
  • 舞扇:日本舞踊、能などに欠かせない、舞のための扇 ・お茶扇 お茶席の必需品。ちょっと小さめで開くことは少ない
  • 飾り扇:扇骨の数が5明(本)、3明など少ないものが多い
  • 儀礼扇:冠婚葬祭に用いる扇
  • 社寺用扇子:経文を写した扇など
  • 人形の扇:雛人形などが手にする小さな扇
と、あまり知られてはいないが、ひとくちに扇子と言ってもその種類は実に多い。日本の伝統美、伝統芸能にかかわるものが多く、いずれも涼をとる用途には使用されない。