お店のご紹介

西陣織、京呉服、京染などの和装関係の業者が多く集まる室町通。町家造の街並みにどっしりとした老舗らしい店構えを見せる誉勘商店がある。初代が没したのが1761年と言う記録が残り、その創業は 250年以上前、江戸宝暦年間と伝わる。寺院の荘厳具に用いる裂地金襴の商いから始まった、誉田屋の名で知られる店は現在の松井社長で13代を数える。現代では装束、袈裟、人形裂地、寺社で用いる宗教金襴などの金襴製品を主に取り扱う織物問屋として、特に有職故実の京人形の裂地では全国トップシェアを誇る京の老舗だ。

織物の長さの単位は、一般的に反物の単位は鯨尺(くじらじゃく)を用いるのが普通だが、この店では、建築などに用いられる曲尺(かねじゃく)を用いる。曲尺を用いた昔の西陣の伝統がそのまま残ったもので、老舗の伝統を伝えるひとつのエピソードだろう。

守るばかりが老舗のつとめではなく、、、

織物問屋の仕事は流通のみではなく、発注元との打ち合わせから、具体的な織物のデザイン、糸の選択、織機と織手の選択まで、織物作りの全体を手がけるプロデューサー的な存在でもある。織物は同じ糸を使ってもその織り方、光の反射により色の見え方が変化する糸の選択、また、使用する織機、織手の力具合によっても、その仕上がりは変化する。その選択にはやはり経験によって積み重ねた知識や勘が必要とされる。松井社長はこの店に生まれ、幼時から数々の商品に触れる環境にあり、その経験がこの店の看板を支えている。おそらくそれは他の老舗でもそうであろうし、京の伝統産業がいつまでも本物の品質を保ち続けられるポイントであろう。

もちろん、守るばかりが老舗のつとめではなく、時代にあった新しい商品も生まれている。例えば独特の高級感をもつショール。「日本人はイタリア人と似て、微妙な色使いに美意識が働くんです。」と松井社長が語る通り、赤、青、緑、紫など普段の色名では表現できない微妙な和の色彩のコンビネーションとシルク独特の光沢がなんとも美しい。洋服文化の中からは生まれてこないであろうデザインである。

これからの金襴
松井社長が店の奥から取り出したのは錦張りのスクラップブック。そこにはさまざまな意匠の絹織物の裂地が集められている。それはこの店が代々生んだ、商品の歴史である。いずれも現代に生きるわれわれが見ても古めかしい感じを受けない、洗練された美しさをもつ意匠ばかりだ。「今の織物のデザインはコンピューターを使って設計します。複雑な文様も簡単にデザインすることができるのですが、実際に出来上がってみると、どこか冷たい印象を受けるんです。だからいつも僕は設計士には『コンピュータで手書きしなさい』と言ってるんですよ。」手仕事ならではの味わいや、繊細なニュアンスはどうしても失われてしまいやすい。古くから深く広い伝統をもつ日本の織物文化。この伝統を現代の中で守り、広げていくには、本物を知る目こそが何よりも必要だろう。