お店外観

 


伝統に時代の息吹を

御主人 茶道と深く結びつき、安土桃山時代に高度な発展を遂げた京漆器。かつては日用品としても当たり前のように使われてきたが、漆不足、職人不足といった数々の難題の前に、悲しくも現代の日常生活からは遠い存在となってしまった。そんな逆境のなか、東山にある表完堂は、京塗りの主流「表派」の技法を今に伝えながら、独創的な作品を次々と作り出し、着実にファンを増やしつつある。

二代目表完を名乗る川瀬厚氏は、挑戦意欲も人一倍。「伝統を受け継いだ者の務めは、そこに新鮮な血を注ぎ、新たな生命体を作り出すこと」という信念のもと、新技法の研究に余念がない。また製作の傍ら、工房を開放して教室を開き、各地の講演で漆の魅力を説き、個展を開けば必ず現場に出掛けてお客さん一人ひとりに説明して回る。「お盆も正月もありませんわ」と笑うが、そこには漆への限りない愛情が垣間見える。

努力の結晶――オリジナルの数々

表完堂の一室。茶道具類に混じって並ぶエビ、カニ、カボチャetc.。一見、漆とは縁のなさそうなこれらの作品こそ、川瀬氏が工夫を重ねて作り出したオリジナルである。「鹿ヶ谷かぼちゃ」や「賀茂茄子香合」は、和紙や布を貼って漆で固める乾漆という伝統技法にフリーズドライを組み合わせたもの。陶器の重みと漆のあたたかさを生かした陶胎漆器も生みだした。「やると決めたらとことんやる」という川瀬氏。「四万十川蟹香合」(天然胎内金箔)の制作にあたっては、カニの種類から大きさ、生息地までを徹底的に研究。捕獲も四万十川で自ら行なった。カニは昔から還暦のお祝いに使われたそうだが、そのいわれまでも勉強した。こうして知識をどんどん広げていくことで、作品にも厚みが生まれるのだという。