京扇子作りの現場〜仕立て職人・清水夫妻
野田社長から職人さんの仕事場をご紹介いただけるということで、市街から少し離れた山科へと向かった。着いた先は住宅街の中の一軒。外観は普通の民家と変わらないが、家の前に立つと、強い独特の芳香がする。扇子につける香水の香りである。通された仕事場は玄関の隣りの一室。そこで仕立て職人清水夫妻は一日の多くを過ごす。 それまで別のルートをたどってきた扇骨と地紙は、この「仕立て」という最後の工程で初めて扇子の形をあらわす。また、最も多彩な工程をこなすのがこの「仕立て」である。まず興味深いのが、地紙の元口から息を吹き込み、中骨を挿し入れやすくする道を開ける「地吹き」という作業。蛇腹に折られた地紙を両手に持ち、口に当ててプゥと一気に吹くとすべての通し道が広がる。 単純な作業だが、普通の職人でもひと吹きで開けるのは難しいという。そして、「地吹き」で開けた数十の通し口に、一本一本中骨を入れていく、中付けという作業、さらに「万力」・「こなし」という整形、熱で曲げた親骨をつける「親あて」の工程の末、 1本の京扇子ができあがる。その一つひとつに特殊な道具があり、清水夫妻はそのメンテナンスもご自身でされるという。